Lisboa,Alfama地区

バイシャ地区からトラムにのって北東の山を登っていくとアルファマ地区。ここを見ることがリスボンに来た一つの大きな理由。
海へとつづく斜面に複雑に立ち並ぶ家々。その間の細い路地も複雑に入り組みイスラムの影響も感じる。1755年のリスボンの震災では12.5mの大津波も発生したとのことだが、この地区はそれらの被害をあまり受けず、それ以前のリスボンの風景を現在まで色濃く残しているという。

まずはアルファマ地区の上に位置するポルタス・ド・ソル広場から眺める。教会などなんとなく目印の建物を確認できるも、そこまでどういっていけばいいかは皆目見当つかず。

広場の脇の下り坂からアルファマ地区に突入。薄暗くて少し心もとない道を歩いていくとどんどん風景が変わっていく。2股に分かれたり、他の道と合流したり。自分がどこを歩いているかすぐにわからなくなる。 しばらく行くと急に少し広いところに出る。どうやら教会の裏のよう。
道幅の大きなメインストリートとその他の細い道という大きなくくりで街ができておらず、1つの道が広くなったり狭くなったりといった感じ。空から見て街をつくってきたというよりは、低い視線で個々の場所をつくっていったのがよくわかる。アドリブの集合。その結果、思わず立ち止まってしまうような風景が街角がいたるところできている。
しかし迷う。

建物の外壁は基本的に白色だが、薄茶色や黄色の建物もちらほら。街の表情に複雑さ増している。住居ごとに塗り分けてテリトリーを示しているようにも読める。改築中の建物をみると、壁はレンガ、床や梁は木でできていて。屋根は茶色の瓦葺。規模は2層のものが多い。
ある日本の大学の研究者がこの街に興味を持って、ある袋小路の空間をリサーチしたという話を聞いたことがある。そこでは道や建物の寸法はもちろんのこと、そこで使われている材質やタイルの目地にいたるまで徹底的に調べたらしい。そのときの写真の記憶を頼りにいろいろと歩き回わったが、残念ながらその路地は見つからず。

この街で一番記憶に残ったのは写真では残せない独特の空気感。路地に生活の音、匂いが染み出してきている。目で見えなくても家の中の様子が手に取るようにわかります。 魚の焼ける匂い、料理を待つ子供、TVの音、TVに文句を言う老人、お酒を飲んでいるのか上機嫌なおじさんの笑い声。狭い路地と建物の密度がそれらを立体的に伝えてくる。日本の下町のそれとは近いようですが、何かが違う。今でもそのときの感覚を身体で思い出すことができるくらい、特殊な経験。

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