Hautatlas

トゥルーエトを出発し、オートアトラス地域を東へと向かう。しばらくは車中からの写真風景。


トゥルーエトの先にも所々に小さな村があるがガイドの地図にも載っていないエリアで地名は不明。後日、Googleの地図を見てもこのあたりの村は載っていなかった。そのくらいの僻地。

土で造られたかような建物たち。小さい建物のように思えるが意外と大きい。擁壁写真中央手前の黒い影が立っている人。

こんなところの村にも必ず立派なモスクがある。塔と緑の屋根が目印。

ほとんどが草木の見あたらない乾いた大地だが、ところどころに緑がある。
アトラスを越えたとはいえまだまだ高地。気温は低い。2,3日前に雪が降ったようだが普段降らない地域にも降ったらしく、珍しい光景なのかもしれない。

山の上(右側)に見えるのは建物の跡か?基本的にこの地域の建物は其の大地の石や土で造られているので、棄てられてもそのまま徐々に大地へと還り自然と人工物の間のような存在となっていく。

少し走ると再び草木の見あたらない大地に。オートアトラスでは風土・風景がめまぐるしく変わっていく。
斜面の少ない草を食べている山羊の群れ。人は見あたらなかったが放牧されているのかもしれない。
赤い大地と白い大地。山羊も何故か二色。

さらに奥地に進むと、ついに未舗装の山道に。崖沿いの道をクネクネと進みます。オフロードカーでないとどうしようもない。かなりの凸凹道で、車内は経験ないくらいの揺れ。手すりにつかまっていても体が安定しない。途中二度ほどガラス窓に激しく頭・顔をぶつけてしまった。
左の写真のように道の真ん中に大きな石があっても迷うことなく石の上に片輪をうまく乗せて進む。当然パンクもさせない。運転手の腕の良さがとてもよくわかる。

トゥルーエトを過ぎてしばらく進んだ地点で、山道を歩く 1 人の女性を見かける。運転手さん(女性と同じベルベル人)が話しかけると、子供が風邪を引き薬が売っている町まで行った帰りで、女性の家は薬のある村まで徒歩で5,6時間。早朝出発し、帰りは日没ギリギリだとのこと。行き先が同じ方向で座席が空いていたので、同乗してもらうことに。

幾つか尾根を越えていくと荒涼とした大地に緑が広がる深い峡谷が現れる。峡谷の斜面には大地と同じ色の村がいくつか見える。秘境。想像していなかった風景に見とれる。

さきほど同乗した女性の村はこのあたりとのこと。谷の反対側だったので途中で降りましたが、車にのってからここまで1時間はかかった。
都市に暮らすモロッコ人とそれほど変わらない服装ではあるが、それでもこの地に住み続ける強さというか誇りというようなものを感じた。

土や日干し煉瓦で造られた村。中央にはひときわ古い建物が見える。この建物は『クサル』と呼ばれるベルベル人の伝統的な建築様式。
『カスバ』と似たような構造だが、『カスバ』が権力者の館なのに対して『クサル』は一般住民の家。複数の家族が住んでいたとのガイドブック情報。

通常、入り口は一つに限られ外堡(がいぼ)によって守られており、建物の中には井戸もあるらしい。四隅には穀物倉にも使われる塔があり、「要塞化された家」とも呼べるような建物。
外敵のいない現代では『クサル』にではなく、周りに新たに造られた平屋程度の住戸に住んでいるようだ。

谷に沿って道を進んでいく。谷は深く100m以上の高低差はゆうにありそう。
写真左に曲がりくねった道が写っているが、舗装のなされていない道は崩れやすく、一つ間違えると谷へと落ちていくような感じ。途中二度ほど車とすれ違ったが、崖側へと半ば脱輪させながら道路面を崩しながらすれ違う時には、さすがに車内で体を山側へと移動して車の重心を変えないと怖く感じるくらいでった。運転手は平然としているがこちらはかなり焦る。


 

谷の両側には所々に村がある。村のある場所は常に谷底の緑と褐色の山の間。どれも粘土と日干し煉瓦でつくられた集落。
緑のある谷底ではなく少し不便そうな場所に家をつくるのは、稀に起こる洪水が理由か、少しでも緑地(畑)は緑地として残そうとしているためか。

目に焼き付いている風景。
谷の緑と山と家々の茶褐色、蒼い空がとにかく感動的。

写真中央には放棄てられた『クサル』。しかしながらその姿は美しい。
その土地の粘土・日干し煉瓦でつくられた『クサル』は、まさにそのまま土に還るかのように風化していきく。何も増えない。何も減らない。ある意味究極の環境サイクル。
建築を設計する身として、深く考えさせるものがある。

峡谷をしばらく進むと別の峡谷と交わる地点に。アトラスから流れる川が乾いた大地を深く削り、帯状のオアシスを生み出していることがよくわかる。遠方には白いアトラスの高い山々(おそらく4000m級)も見える。


谷には影もできる。気候の厳しいこの地域では、風と強い日差しから人々を守ってきた地形なのかもしれない。

車を停め景色を眺めながらしばし休憩。
こんなところでお土産を売る人たちが。運転手さんが仕事柄顔見知りなのか少し会話している。

ここからは谷に沿ってさらに下流へと進む。よくよく考えるとこの川。海ではなくアフリカ大陸の内部へと向かっている。つまりこの川の水は蒸発するか大地に吸われるかのどちらかということか。遠くにまで思いを馳せると不思議な感覚にとらわれる。

ここから先は徐々に風景がおとなしくなる。ただしばらくは手すりを持っていないと体が安定しないような凸凹道。(ツアー会社によると車酔い患者多数の道。)それでも連日の疲れがでたのか、体をバウンドさせながらもうつらうつらしてしまい、ところどころの記憶がない。こんな状況でも眠れる自分に驚き。運転手も驚いていたとあとで妻から聞いた。