Place Rahba Kedima

ラバ・クディマ広場。
フナ広場に比べればだいぶ小さいが、スークの中にあるため街の中心にいるような印象。にぎやかな広場と赤い街並み、遠くの白い雪をかぶったアトラス山脈と碧い空の色の対比が美しい。忘れられない風景。
三角形の広場にはたくさんの出店がでている。パラソルを立てゴザを敷き、その上にたくさんの商品が。 写真は広場に面するCafe de Epices(カフェ・デ・エピス)の屋上からのもの。
カフェで休憩するのはほとんどはヨーロッパからの観光客。もちろんここでも飲むのはミントティー。それと餃子みたいなかたちのお菓子を食べてみる。生地の内側には甘くシットリとしたマドレーヌのようなものが。美味しい。人ごみから離れてしばし休憩。















広場に面するCafe de Epices(カフェ・デ・エピス)の屋上からの風景。どこに視点を移しても楽しい。
アーチの奥はスーク。広場はスークに囲まれているため、スークの一部のような印象。日用品やら土産品やら香辛料やら、それぞれの店の商品はかなり雑多。観光客だけでなく住人も買物に。

スークは細かいバラックの集まりのような感じ。上からでは1つ1つの建物が認識しにくい。屋根の上にはゴミなのか、屋根が飛ばないようにしている重しなのか。かなり汚れた感じの風景だが気楽な雰囲気。
ところどころにある小さなドームはハマム(公衆浴場)のようだ。絨毯屋かと思われるがちょっと立派な家もある。スークを歩いていると絨毯屋は他の店に比べると少し上等な感じのところが多い。赤い壁に干された大きな絨毯が綺麗。

ラバ・クディマ広場に降り、買物。
広場で遊んでいる子供が持っていた革の馬の人形を妻が気に入り、露天で探してみる。
しばらくするとそれらしいお店が見つかり、品物をみていると店主のおじさんが話しかけてきた。その店にはラクダの人形しかなく立ち去ろうとすると、おじさんは近くの別の店に飛んで行き、勝手に馬の人形を数体もってきた。(いいのか?) 人形は20cmくらいの大きさ。革製で匂いがそれなりに。全体的にラフなつくりだけど味がある。ということで商談開始。 まずは2体で180DH(約2700円)からスタート。ボリすぎでしょう。そこから紙に書いた金額を往復すること10数回。いつの間にか馬×2体、ラクダ×2体で200DH(約3000円)に。正直そんなにはいらなかったが、友人・親戚の土産を考えて交渉成立させることに。あとあと考えるとちょっと高い気も。店長はまた人の店に行って勝手に小さな木の馬の人形をもってきて、おまけとしてくれた。

買物をしていくと段々交渉がうまくなる。
別の店でアクセサリーの値段交渉をしていると、あまりに無茶な金額を言ったせいか、「アー・ユー・ベルベル?」と言われる(妻が)。ベルベル人とはモロッコの中の1つの民族。どうも商売がシビアな民族らしく、日本の「大阪人」みたいな使い方のよう。その後もいろいろと買物をしたがどこも同じような感じ。
しっかりとお金を交渉することは必要だが、なによりやりとりを楽しむことが重要。単純に高かいと思ったら買わない。それにしても、陽気な人、職人気質の人、いいかげんな人、それぞれの見た感じが非常にわかりやすい。

Medersa Ben Youssef

ベン・ユーセフ・マドラサ
1565年創建の神学校。50年程前までつかわれていたらしい。モロッコイスラム建築の最高傑作とも言われている建物。
街中から暗い入口を通り抜けるとまず目に飛び込んでくるのは、荘厳なパティオ。紺碧の空と、床中央には静かに水をたたえる水盤が天地にひかえる。
広さは目算で20m×25m、周囲の建物の高さは15mほど。決して広くはないが、1つの宗教観というか宇宙観を感じるのには充分。モロッコの他のイスラム建築から1歩も2歩も抜きん出た存在。
建物に目を向けると飛び込んできるのは、精細な彫刻が施された漆喰の壁と木の壁。そしてモザイクタイル。アトラスシーダーの黒ずんだ木部と、マラケシュの赤土によって薄く色づいた漆喰のコントラストの不思議な一体感は見たことがない。
木部は構造的にも梁やアーチの補強となっているようにみえた。ただ、漆喰の壁と同じく精巧な彫刻を施され、そのことを感じさせない。
漆喰壁の彫刻は底が見えないくらいに深い。モロッコの強い光の中で陰影を浮き立たせるには、このくらい深くないと負けてしまうようにも思えた。屋根付近まで全く手を抜いていない。

2階から中庭を見る。水盤は建物や空を写しだす鏡。
不思議に思えたのは床の大理石のパターン。継ぎ接ぎのようなパターン。貴重な石のサイズに合わせて無駄なく組み合わせていったのか、もしくは少しずつずらすことで強度を出しているのか。


パティオ周りの回廊部。
腰より下は壁も床もモザイクタイルで天井は木材。この上部には部屋がある。
ところどころにある小さなドームの鍾乳石状の天井細工はアルハンブラ宮殿にも通じるデザインソース。モロッコから地中海を越えて南スペインに王国と文化が伝わっていったのがよくわかる。

回廊から2階に上がると、かつての神学校生たちの部屋が並んでいる。廊下にはところどころに小さな吹抜けがあるが、どこも装飾に手を抜いていない。 この小さなパティオは学生の憩いの場のような空間。現在は保存のためかガラス天井となっているが、元は天然の空調としても効いていたはず。少し気持ちのいい空間。

2階にはおそらく神学校の学生たちが暮らした部屋が並ぶ。廊下から低いアーチをくぐって各部屋に入る。
部屋は実に質素な造り。白い漆喰の壁面には小さな窓や棚のような凹み。ただ面白いのは、各々の部屋の窓の穿ち方がすべて異なる点。周囲の建物との関係や、方角などが理由にはあるかもしれないが、とにかくいろいろなバリエーション。
・高い位置に小さな窓しかない静謐な部屋。
・窓や棚が多く楽しげな部屋。
・角に窓があり街が見える部屋。
・屋根裏ロフトのある部屋。
・アーチ状の小さな凹みの上部に小さな窓のある間接光の部屋。
まるで建築を学ぶ学生が始めに習いそうな、光のスタディ。一番気になったのは廊下・小パティオ・部屋と並んでいる部分で、窓や扉が立体的に一直線に並んでいるところ。2つの部屋越しに外まで視線が通る。
神学校という性質上とても質素な空間ですが、そんな中の小さな遊び。思わず笑みがこぼれる。

Koubba Ba'Adiyn

クッバ・バアディン
12世紀に建造された独特なドーム屋根を持つ水利施設。マラケシュでは唯一残るムラービト朝時代の建物。敷地内の貯水池にはアトラスからの流れてくる水がきていたらしい。小ぶりなドームとそこに穿たれた不思議な形状の窓。小さいわりに壁が厚く、独特な量感。大雑把なつくりなようで、実は二重のドームとなっており複雑な構造。
ドームの間にも装飾が施されている。乾いた土地であるため、水はとても貴重なもの。ドームの建物に何か特別な機能があるようには思えないが、信仰に似た何か切実な思いがあったのかもしれない。隣にはマラケシュを代表するモスクがある。

Riad Dar Tuscia

初日、2日目のマラケシュ滞在中の宿。
Riad(リャド/なんだか「宿(ヤド)」に近い発音)は邸宅を改装してホテルへとリノベーションしたもの。ここ数年で増えてきたらしい。初日の晩になかなか見つからなかった玄関は特に看板もなく、他の住戸と一体化している。外壁の赤はマラケシュの街の特徴。メディナの中のやや奥まった場所にあるので少し利用しにくいが、Riadの中では少々リーズナブル。
中に入り、玄関を抜けると中庭に。ガラス屋根がかけられ室内化されているが、明るく空気も外の空気に近いというか、外の空気よりも爽やかな感じ。小さなオアシスのような印象。
この中庭ホールを囲うように食堂(かつてのリビング・ダイニング)や厨房、各宿泊部屋が並ぶ。ほとんどもとの住宅の使い方を踏襲しているので、ホテルというよりモロッコの家に泊まれるような感じでお薦め。 階段を上がると中庭ホールを囲むように廊下があり、3部屋ほどあった。各部屋からは木格子の窓から中庭ホールが見える。

1階の部屋はおそらく元主寝室だった部分。2階は子供室や祖父母室、客室のような感じ。泊まった部屋からは外部側の窓が一部しかなく、しかも高い位置にあるためあまり外を望むことができない。外から守られている印象。洗面室は数年前に改装したばかりに見えた。壁やカウンターはおそらくタデラクトという撥水性のある漆喰を用いていると思われる。壁が斜めだったり塗装が少しはみ出していたり、いろいろなものが斜めについていたりしていますが、それがまた味に。。
朝食風景。主にいろいろな種類のパンやジャム。モロッコは近年までフランスに統治されていたので、パンや紅茶などヨーロッパの文化も入ってきている。一番特徴的だったのは円盤状のスポンジのような質感のパン。何かの植物油を浸され全体的に甘い。これはモロッコ独特の食材。
ホテルは掃除係の方の他は若い女性のスタッフが1人でほとんど切り盛りしている感じ。食事の準備から受付などすべて彼女が行っていた。英語は通じないのだがとても親切で感じのよい方だった。

Musee de Marrakech

マラケシュ博物館。 19世紀後半に宮殿として造られた建物。テント屋根がかけられたかつてのパティオ。モザイクタイルの床や壁面の彫刻が美しい。
パティオ 周囲にはところどころに壁面椅子のあるニッチがあり、そこはとてもよい感じ。人が少なければゆっくり休める。しかしテント屋根には少しがっかり。保存の問題が理由かもしれないが、オープンエアの状態を体験したかった。パティオにとって重要な要素である噴水はオアシスの暗喩。

壁面の装飾。石の透かし彫り。何度みてもものすごい技術力。何気ない場所にも用いられているところが少し狂気めている。
パティオにかかってきたシャンデリアは銅板か何かを精細に切り欠き模様としているが。透けすぎていて逆にフレームが目立つ。
中央パティオと隣室との間の開口部。壁にこれだけの厚みがあるのは石造の特色。この重みを装飾で軽減しているような印象。壁の小口に設けられた繊細な装飾。 モザイクタイル貼りの内部。とにかくイスラム建築のデザイン密度には驚かされる。 別の箇所の小さいパティオ。今はトイレ前の空間となっています。贅沢。 建物の奥にはドーム状の小空間。現在は展示室に転用されていますが、元はハマムというモロッコ式の浴室。街中にも同様の小さなドーム屋根が随所に見られ、現在もモロッコ人に共同浴場として活用されています。 ドームに穿たれガラスのはめ込まれた小さな窓からは柔らかな光が。隣にも別のハマムのスペースが。なんだか女性的なデザイン。勝手に男女それぞれのスペースかと思ってみる。

伝統工芸館

比較的新しい建物。銀細工・陶器・革製品・木工品・バブーシュなどいろいろな工芸品のお店とアトリエがあり、商品も買える。商品を見ていても、街中のお店とは違いそれほど売りに来ない。なによりそれなりの適正価格で販売されており、値札もついていて相場を知るのにもってこい。本格的にスークで買物を始める前の予備戦として最適。

生地屋を見学。ほとんどがストライプ程度のシンプルな柄。不思議な光沢をたたえる布も。妻はストールを物色。実演もしている。あまり本気で仕事をしている感じはしない。半分パフォーマンスのような感じ。
機織りをしばし眺める。地糸を紡がず、そのまま織っていく。細い糸のまま織られているので、織りあがったとき光沢がでるよう。
落ち着いて工芸品を見るにはとてもいいところ。でも街歩きになれてくるとスークの熱気が恋しくなる。結局買物はほとんどスークで済ませた。

ets.

メディナを囲む城壁の門の1つアグノウ門。王宮の近くの門で、赤や緑の砂岩で縁取られている。どの門も異なる意匠となっていますが、それぞれに独特の存在感がある。10km以上つづく城壁の存在も強く印象に残っている。
ラリサ門(たぶん)。サブ的な門だが、規則的な石積みと不規則な石積みが合わさったデザインと、出っ張らせた目地が印象に残る。
門とは異なりるが街中には様々なアーチがある。何かの領域をあらわしていたり、単に建物を支えあうものであったりする。夏場は少しだけ心地よく日差しを弱めそうにお思える。

無規則に造られたような街に思えるが、いろいろな民族にかわるがわる支配されてきたことがその理由の1つかもしれない。にも関わらず、あるルールというより価値観をもって街がつくられてきたことを感じる。今ではマラケシュ・メディナにはアラブ人系、ベルベル人系など様々な人種が住んでおり、歴史的遺産であることと同時に生きた街として今なお更新されている。そんなところにマラケシュの魅力があるのかもしれない。

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