世田谷の2階建の住宅
/M House

所在地 :東京都世田谷区
主要用途:住宅
竣工  :2012年11月
敷地面積:123.38u
建築面積:50.96u
延床面積:101.88u
規模  :地上2階
構造  :木造
構造設計:鈴木啓/A.S.A
照明設計:内藤真理子/コモレビデザイン
施工  :栄港建設
写真  :鳥村鋼一 
担当  :瀧波龍太郎

世田谷区等々力に建つ若い夫婦と小さなお子さんのための住宅。
敷地周辺は比較的コンパクトな敷地の家が増えはじめているものの、まだまだ大きな屋敷や木々が残り家々の隙間からそれらを垣間見ることもできる。
敷地はいわゆる旗竿敷地。ただし、道路からのアプローチの幅が2mに満たないため通常よりも厳しい法規制・条件で計画している。

通常、旗竿敷地の家の1階は暗く風も抜けない空間となりやすいため、寝室や納戸や水回りなどにされることが多いが、この家の1階は4.2mの天井高をもつ大きなワンルーム(LDK)としている。建物は敷地の中央に配置をしているので四周に窓を設けることもでき、家の回りには木を植えたり子供が走り回れるだけの隙間もある。南・西側の外壁面を平面的に斜めに傾け3.6m角の大きな窓をそれぞれに設けることで光りを充分に取り込むことができ、家々の隙間から空や少し離れた林の木々を見ることもできる。
LDKの角の階段を上ると階段の途中に洗面・浴室等の水回り。さらに上ると寝室がある。ともに天井の低い部分と高い部分があり、屋根裏のような空間の楽しさが現れるようにしている。 隣家とレベルが少しづつずれることで、浴室からは気兼ねなく窓より空を臨むことができ、寝室からは隣地より少し高い景色を眺めたりできる。LDKが大きな気積を持つ分、これらの部屋は扁平な断面形状となるがそれがこの家の生活の楽しさに繋がればと考えた。
上下を繋ぐ開放的な階段からはそれらの生活をつねに複数垣間見ることができるので楽しい。そのため階段途中に本読みや小さい子用の勉強机など、階段自体にとどまって時間を過ごせるような場所づくりをしている。

1階の大空間はクライアントの「倉庫」という言葉をヒントにしているが、少し大雑把にも思える大きな空間とは裏腹に外と中を丁寧に紡ぐこと、ディテール上の仕掛で室内自体が外のような自由な感覚になることを目指した。 一方、2階は「屋根裏」のような余りでつくられた偶然の空間の楽しさがでてくるようにしている。

この敷地では審査会審査上、2階建や外壁後退、通常より低い建蔽率等を選択せざるを得なかったが、不思議とその選択のおかげでずいぶんと計画の自由度が増したようにも思えている。
その結果として生むことができたおおらかな空間を持つ「2階建」は、その構成のシンプルさ故に1つのスタンダードになりえる強度を持っているのではないだろうか。

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